「地域包括支援センター」とは — 介護のいちばん最初の相談窓口
地域包括支援センターとは——介護のことで最初に迷ったとき、まず無料で相談できる公的窓口です。相談できること、対象になる人、探し方をまとめました。介護している人が倒れたときの緊急ショートステイ、障害福祉の窓口との関係と「65歳の壁」にも触れます。
「病院の先生に相談する? 区役所に行く? ケアマネジャーってどこで頼む?」——はじめて介護のことを調べると、窓口の多さに迷います。夜、スマホで検索しては、結局どこにもかけられないまま閉じてしまう。そんな夜を過ごしている方は、少なくないはずです。
その答えを先に書きます。介護のことで迷ったら、まず地域包括支援センターです。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、介護保険法にもとづく公的なよろず相談窓口です。全国の市区町村に設置されており、相談は無料です。
介護保険の申請前でも、「まだ介護というほどではないけれど……」という段階でも相談できます。「どこに相談すればいいか分からない」も、十分な相談の入口になります。
誰が相談できるの?
中心になるのは65歳以上の方と、その家族です。ただし、年齢だけで線が引かれるわけではありません。
40〜64歳の方でも、特定疾病(パーキンソン病・初老期認知症・末期がんなど16疾病)に該当する場合は、介護保険の第2号被保険者として対象になります。「まだ現役世代だから自分たちには関係ない」と思い込んで、窓口にたどり着くのが遅れてしまうことがあります。ここは知っておくと役に立ちます。
相談するのは本人でなくてかまいません。家族・親族・近所の方からの相談も受け付けています。
障害のある方と、地域包括支援センター
「介護保険の窓口なら、障害のある人には関係ないのでは」と思われるかもしれません。そこは、少し込み入っています。
日ごろの障害福祉サービスの相談先は、基幹相談支援センターや相談支援事業所、市区町村の障害福祉担当課です。根拠になる法律(障害者総合支援法)が別だからです。
ただし、障害のある方が65歳になると、介護保険が優先される決まりになっています(障害者総合支援法 第7条)。介護保険と重なるサービスは、原則として介護保険のほうから使うことになり、その手続きや相談の窓口として地域包括支援センターが関わってきます。40〜64歳でも、特定疾病に該当すれば同じです。
つまり地域包括支援センターは、障害のある方にとって「無縁の場所」ではなく、どこかで必ず通ることになる窓口です。このときサービスの中身や自己負担が変わることがあり、「65歳の壁」「65歳問題」と呼ばれて議論が続いている論点でもあります。65歳が近づいてきたら、早めに両方の窓口に相談しておくと、変化に備えやすくなります。
なお近年は、年齢や障害の有無を問わない相談窓口(重層的支援体制整備事業)を整える市区町村も増えています。迷ったら「どちらの窓口か分からないのですが」と前置きして、かけて大丈夫です。正しい窓口を先に突き止めようとするより、そのほうがたいてい早く進みます。
どこにあるの?
日常生活圏域という単位ごとに置かれていて、目安は人口2〜3万人程度に1か所です。「中学校区にひとつ」という説明を見かけますが、これは人口の多い地域でたまたま近い規模になるという話で、決まりではありません。区割りは市区町村が決めます。
実際、人口2万人規模の市では、市全域で地域包括支援センターは1か所だけ——中学校は3つも4つもあるのに、というところが珍しくありません(そのかわり、旧町の単位で相談窓口が置かれていることがあります)。逆に大きな市では、いくつも設置されています。
数を数えるより、「(市区町村名) 地域包括支援センター」と検索するのが確実です。本人が住んでいる地域の担当センターが見つかります。離れて暮らしている家族からの電話相談も受け付けています。
こんなときに関わる
たとえば、お盆に帰省したら、玄関の上がりかまちで父がふらついた。以前は軽々と提げていた買い物袋を、途中で置いて休んでいる——心配だけれど、病院に連れて行くほどなのか分からない。そんな「介護未満」の場面こそ、地域包括支援センターの出番です。申請でも手続きでもなく、「これって相談していいことですか?」から始められます。
きっかけは、もの忘れとは限りません。
- 転んだ、つまずくことが増えた、階段がつらくなった
- 入院や手術のあと、退院後の暮らしが元どおりにいかない
- 食が細くなった、外出や人づきあいが減った
- ひとり暮らしで、火の元や戸締まりが心配
- ゴミ出しや掃除、買い物が追いつかなくなってきた
- お金の管理や契約ごとに不安が出てきた
- 介護している自分のほうが、そろそろ限界かもしれない
何を相談できるの?
- 介護保険の申請のしかたや、どこに出せばいいか
- ケアマネジャーの探し方
- 気になるサインへの次の一手(転びやすくなった、退院後の様子が違う、同じ話が増えた など)
- 今すぐ動く必要があるか、どの制度が使えるかの整理
- 手すりや段差など、住まいの環境の見直し
- 成年後見や消費者トラブルなど、権利を守るための相談
- 介護している自分のほうが、倒れそう/もう倒れている
「こんなことで相談していいのか」と気にしなくて大丈夫です。
介護している人が倒れたとき
見落とされがちですが、ここがいちばん知っておいてほしい使い方かもしれません。
地域包括支援センターに相談できるのは、介護される側のことだけではありません。利用できる人には、その人を支えている人——つまり介護している家族自身が含まれています。「本人は入院したけれど、私のほうが動けない」も、そのまま相談になります。
たとえば、介護している自分が急病や感染症で寝込み、同じころ本人も入院した。退院後どこに預けるかを決めなければいけないのに、自分が起き上がれない。そういう場面のために、緊急ショートステイという枠を設けている自治体があります。「介護者の急病や事故等により緊急に利用が必要な方」といった条件が、はっきり書かれているものです。
専用の建物があるわけではありません。特別養護老人ホームや病院の中の一部の床を、自治体が緊急用としてあらかじめ押さえておく形が多く、自治体が施設と委託契約を結んでいることもあります。そのかわり数は限られていて、区内で1床、という自治体もあります。
ここが大事なところです。 名称も、根拠(自治体の独自事業か、介護保険の短期入所か)も、申し込み先も、自治体によってばらばらです。ケアマネジャーを通して役所に相談する自治体、施設に直接予約する自治体があり、地域包括支援センターでは申し込みを受けていない自治体もあります。
そして多くの場合、事前の申請が必要です。「前日まで」「5日前から前日まで」といった締切があり、倒れたその日に電話して今夜から、とはいかないことがほとんどです。
だからこそ、倒れる前に調べておく制度です。お住まいの自治体に緊急枠があるか、申し込みはどこか。それを知っているだけで、動けなくなった日の選択肢がまったく変わります。元気なうちに一度、センターに聞いておいてください。
なお、実際に倒れてしまった後でも、受け入れ先を片っ端から探して電話をかけて回るのは、本来あなたの仕事ではありません。相談を受けて必要な先につなぐところまでが、センターの業務(総合相談支援)です。
ただし、ひとつだけ線引きがあります。 センターは福祉の窓口なので、あなた自身の体調そのものは担当の外です。息が苦しい、意識がはっきりしない——そういうときは、迷わず医療(救急)のほうを先に呼んでください。「介護の体制をどうにかしてほしい」はセンター、「自分の体が危ない」は医療。この2本は、同時に引いてかまいません。
持っていく(伝える)と話が速いもの
- 本人の年齢と、おおまかな健康状態・持病
- 最近気になった具体的な場面(「玄関でふらついた」「退院してから食が細い」「同じ話が増えた」など)
- 介護保険証があれば手元に(なくても相談できます)
- 家族がどこまで関われるか(同居か遠方か、平日動けるか)
コツはひとつだけ。「心配です」より「こんな場面がありました」と伝えること。具体的な場面がひとつあるだけで、窓口の方は次の手を出しやすくなります。
まとめ
地域包括支援センターは、介護のことで迷ったとき、いちばん最初にかける電話です。相談は無料で、介護保険の申請前でも動けます。65歳以上の方が中心ですが、40〜64歳でも特定疾病に該当すれば対象になります。
障害のある方の日ごろの相談先は障害福祉の窓口ですが、65歳になると介護保険が優先されるため、地域包括支援センターがどこかで必ず関わってきます。担当が別の窓口になる場合でも、電話すれば適切な先を案内してもらえます。
そして、介護される側のことだけの窓口ではありません。介護している自分が倒れたときにかけていい場所でもあります。ただし緊急ショートステイのような備えは、名前を知らないとたどり着けないうえ、多くは事前の申請が要ります。倒れてからでは間に合わないことがあるので、元気なうちに一度、聞いておいてください。
「あの日のあれ」が、相談を具体的にする
センターへの相談は、「なんとなく心配」より「最近こういうことがありました」と言える方が話が速く進みます。その「場面」は、日々のなかで軽く残しておくのがいちばんです。
CareQuest の記録は、相談の前に見返すと「あの日のあれを話そう」がすぐ見つかります。
ご注意: 制度の内容や名称は変わることがあります。最新の情報は、お住まいの市区町村の窓口や公式サイトでご確認ください。
よくある質問
地域包括支援センターの相談は無料ですか?
はい。介護保険法にもとづく公的なよろず相談窓口で、相談は無料です。介護保険の申請前でも、「まだ介護というほどではないけれど」という段階でも相談できます。
本人でなくても相談できますか?
できます。家族・親族・近所の方からの相談も受け付けています。離れて暮らしている家族からの電話相談も可能です。
どこにあるか、どうやって調べますか?
日常生活圏域という単位ごとに置かれ、区割りは市区町村が決めます。「(市区町村名) 地域包括支援センター」と検索すると、本人が住んでいる地域の担当センターが見つかります。

今日も、読んでくださってありがとうございます。